中学入試受験生ならここまで解ける!共通テスト2022年日本史Bその1

2022年度の共通テスト日本史Bを、中学受験生が解けばどうなるか、をみていきます。

 

これは小学校で学ぶ日本史の知識がいかにあとあとまで影響を及ぼすか、ということの見本となります。基本的な知識を早い段階でつけておかないと、受験直前の間に合わせで得点を上げるための努力に追われることになります。

昨年度の分のリンクです。

中学入試受験生ならここまで解ける!共通テスト2021年日本史Bその1

中学入試受験生ならここまで解ける!共通テスト2021年日本史Bその2

中学入試受験生ならここまで解ける!共通テスト2021年日本史Bその3

 

ちなみに中学の歴史は中学入試の社会に世界史を付け加えたものです。ほぼ流用できます。したがって中学入試は関係ないという方は、中学校卒業レベルとお考えください。

 

社会の担当者がよく言うことです。「数学の一点も社会の一点も同じ一点」です。ここの「数学」は苦手な科目を入れていただいて構いません。社会は努力すれば努力しただけの点数が取れます。

 

とりあえずみていきましょう。今朝の朝刊の共通テスト日本史Bの問題を手元においてみてください。

 

第1問は名字・姓の問題です。選択的夫婦別姓問題でも話題になっていますね。

大輝さんのメモ

・氏(うじ)は大王やヤマト政権に仕える同族集団をもとに成立。

・姓(かばね)は大王から氏(うじ)に与えられた称号。

・律令制下では、姓(せい)は氏(うじ)と姓(かばね)の総称とされた。

・天皇は姓をもたない。

・平安時代に姓(かばね)が形骸化して、姓は専ら氏(うじ)を指すようになった。

・平安時代以降、源・平・藤・橘が代表的な姓(せい)となる。

苗字(名字)

・家名として私称されたことに始まる。

・叙位・任官などの際には、苗字ではなく姓が用いられる。

・武家の苗字は、所領の地名に由来するものが多い。

・明治時代には、それまでの百姓や町人にも苗字の公称が許された。

このメモを片手に「小野妹子は「おのの/いもこ」、北条政子は「北条/政子」と読み、「の」があったり、なかったり」する理由について話しています。

「北条政子の場合、平氏の一族であり、平政子が正式な名前と考えられている」

「ということは、北条政子は( ア )だから、「の」がつかない」

「明治時代になると、政府は( イ )ために、平民にも苗字を名乗らせたんだ」

 

問1 ( ア )( イ )に入る文の組み合わせとして正しいものを、①〜④のうちから一つ選べ。

① ア 苗字+名 イ 華族・士族・平民の身分を撤廃する。

② ア 苗字+名 イ 近代国家の国民として把握する。

③ ア 姓+名 イ 華族・士族・平民の身分を撤廃する。

④ ア 姓+名 イ 近代国家の国民として把握する。

 

これは問題文を丁寧に読んでいればわかります。「正式な名前」は「たいらの/まさこ」ですね。「北条政子」ですから③と④が消えます。問題はイですが、中学受験生(中学卒業生、以下同じ)ならば「華族・士族・平民の身分」は明治時代に作られたものであることはわかります。

 

問2 中世のある武士について述べた文X・Yとその人物の姓や苗字a〜dの組み合わせとして正しいものを、後の①〜④から選べ。

X 育った信濃国の地名で通称された。敵対する一族を都から追い落として朝日将軍とも呼ばれたが、従兄弟との合戦で敗死した。

Y 姓は源氏だが、所領の地名を苗字として名乗った。室町幕府から東国支配を任されたが、将軍と対立して自害に追い込まれた。

a 平 b 源 c 新田 d 足利

 

Xは木曽義仲、Yは足利持氏です。Xは中学受験生ならば分かるはずです。Yは高校で習うレベルですね。ただ「室町幕府から東国支配を任された人物(鎌倉公方)」が「新田」ではないのは分かるのではないでしょうか。

問3

近松門左衛門・江川英龍・三浦按針の順番について答える問題です。これは中学受験でも基礎に属します。

 

問4

嵯峨天皇の系図を見て答える問題です。「小野妹子は男だ」というベタなネタで構成されています。そして「嵯峨天皇のこどもから名前の付け方ががらりと変わってるのが分かるね」という言葉から問題が作られています。「そうなんだ。「山部」(桓武天皇)とか「大伴」(淳和天皇)は、どれも彼らの乳母の氏、養育氏族の名称なんだ。嵯峨天皇の親王になると、良い名前を持つ共通の漢字がつけられるようになる」という返事も併せて考えます。

a 養育氏族の名称が消滅し、和風化の影響が認められる。

b 養育氏族の名称が消滅し、唐風化の影響が認められる。

c 源の姓を持ち、天皇の子どもであっても臣下となるものが現れた。

d 親王の兄弟で同じ漢字が使われ、皇位継承の順番が明確になった。

aとbは少し引っ掛け問題ですね。「平安時代になると和風化する、aが正しい!」というと間違えます。「よい名前を持つ共通の漢字がつけられる」というのは唐風化です。「奈良時代=国際的、平安時代=日本独自の文化」という単純な図式を刷り込まれると、こういう問題で足をすくわれます。dはどう考えても読み取れません。逆にcは系図に「源信(みなもとの/まこと)」などがいるのを考えれば正しいのは「b・c」の組み合わせとなります。

 

問5

表から読み取れる解答を選ぶ問題です。

X アメリカ・イギリスに宣戦布告し戦場が拡大すると、勝利を祈願するような名前が優勢になる。

Y 天皇の代替わりにともなう改元の影響もあり、新元号の一字を冠した名前が登場する。

表を見れば、1942年から45年まで「勝」さんがトップに、「勝利」さんが1944年の3位に出ています。Xは正しいですね。次に1927年、1928年には「昭二」「昭三」「昭」「和夫」さんが出てきます。「昭和」という元号とぴったりです。

というわけで両方とも「正」となります。

問6

正誤問題です。

a 天皇は姓を持っておらず、それを臣下に与える存在であったと考えられる。

b 江戸時代以前における日本の支配階級においては、夫婦同姓が原則であったと考えられる。

c 近世の百姓・町人が基本的に苗字の公称を許されなかったのは、武士身分との差別化を図るためと考えられる。

d 明治の民法が女性に嫁ぎ先の苗字を使用させたのは、啓蒙思想の普及を図るためと考えられる。

bとdは今の「夫婦同姓」「選択的夫婦別姓」の問題を踏まえています。なんとなく「夫婦同姓は日本の伝統」という誤った知識を覚えていると、こういうところで取れたはずの点を失うことになります。ちなみに男性の姓を名乗らせたのは「家父長制度」の維持のためです。しかしその点を知らなくとも、女性に男性の姓を強制することと啓蒙思想の普及にはなんの関係もないことは分かります。aとcが「正」、bとdが「誤」となります。

 

とりあえず中学入試の知識で満点は十分狙えます。問2が少し引っかかるかもしれませんが、あとは十分対応できます。ここは配点が全て3点ですから、15〜18点が狙える計算になります。

長くなりますので、ここで一回切ります。

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