拙著『神風頼み』柏書房の詳細な目次

7月21日、私の2冊目の単著となる『神風頼み』が出版されます。

神風頼み(一般書/単行本/日本歴史/)柏書房


神風頼み 根拠なき楽観論に支配された歴史

 



神風頼み 根拠なき楽観論に支配された歴史 [ 秦野 裕介 ]

 

「日本は神風が吹く、神に守られた特別な国」という「神風思想」が生み出す「ニッポンすごい!」「独り善がりの排他主義」「根拠なき楽観主義」……元寇から特攻まで日本史を貫きつづけてきた「神風思想」は、太平洋戦争における敗戦という結末を迎えることとなったが、その意識自体はいまだ日本人の心に根強く生き続けている。
本書は、「神風思想」がいかに形づくられていったかを、史実に沿って検証、「神風が吹いたのは日本だけではない」「神社による立派な〈武器〉だった神風」「実は友好的だった元寇前のモンゴルの外交姿勢」「天皇制をこき下ろした天皇」「〈神の国〉ではなく〈人間本位〉を考えていた中世の政治家たち」「立憲制を念頭に置いていた大日本帝国憲法」など、日本が決して「神風思想」だけに凝り固まっていたわけではないことを示す事実を挙げながら、「神風思想」とそれに対峙する形の「撫民思想」とのせめぎ合い、そして「神風思想」の根幹をなす「根拠なき楽観」が招いた悲劇の過程を辿っていく。
歴史的論考としてはもちろん、コロナ禍、ウクライナ戦争など混迷の時代において危機をいかに克服していくべきかの指針ともなる一冊。

【目次】

第一章「元寇」と「神風」――元寇が生んだ「神風」意識の誕生と定着

  • 『八幡愚童訓』に見る“アホでマヌケな鎌倉武士”
  • 史料からは確認できない「神風」
  • 「神風が吹く」のは日本だけではなかった
  • 神風はほんとうに吹いたのか?
  • 神社と武士の手柄争いの産物だった「神風」
  • 「元寇は朝廷滅亡策?」−江戸時代の“陰謀論”
  • 湯地丈雄による「元寇の記憶」の復活
  • 「元寇絵」で行われた“切り取り”
  • 蒙古襲来史料『伏敵篇』における恣意的解釈

第二章 神国ニッポン――日本はよそとは違う特別な国なのだ!

  • 神々が求めた「神風」への恩賞
  • 神社向けの徳政令=神領興行法
  • 強まる「敬神意識」に押し潰された鎌倉幕府
  • 「神が日本を守った!」−室町時代のフェイクニュース
  • 局地的紛争が「元寇の再来」に
  • 対中国外交に見る足利義持の「神国思想」
  • 少弐満貞らはなぜ“盛った”のか?
  • 義持周辺の中国人たちの国際感覚
  • 「朝鮮は日本の属国」−室町の国際意識
  • 「東夷の小帝国」意識

第三章〝人のために神がある〟――「敬神」へのアンチテーゼとしての「撫民」

  • 中世日本のヒューマニズムとグローバリズム
  • 「戦争より平和を」−クビライ書状の真実
  • 対クビライで割れた朝廷と幕府の対応
  • 「徳大寺実基政道奏状」における人間中心主義
  • 「ゴマスリのバカは“日本は王朝が続く特殊な国”と言う」
  • 花園天皇という人
  • 天皇による「日本スゴイ」論への批判
  • 「吉田定房奏状」による“過激な”王朝批判
  • 『神皇正統記』は「神国思想」のバイブル?
  • 北畠親房による「ダメな天皇」展覧会
  • 「神皇正統」という言葉の真の意味

第四章「国体」の形成――近世に見る「神の国」の復権

  • 「神使い」吉田兼倶の登場
  • 伊勢神宮の御神体を“手に入れた”兼倶
  • 現在の神道観とは大きく違う吉田神道
  • 世界征服を目指した豊臣秀吉の「日本」観
  • 明臣下としての日本国王を受け入れた秀吉
  • 「神」になった天下人−秀吉と家康
  • 神の国再び!−「寛政の改革」のもう一つの側面
  • 「大政委任論」に見る定信の天皇観とその前提
  • 異国船打払令と「国体」の完成

第五章 神武天皇と足利尊氏――国家の学問介入を象徴する二人

  • 学問へ容喙する「神風思想」
  • 時代祭りから排除され続けた足利氏
  • なぜ南朝が正統とされたのか?
  • 「神武復古」明治政府の「神の国」
  • 南朝のヒーローを“抹殺”して“炎上”した久米邦武
  • 「北朝の天皇は偽物だ!」−明治時代の教科書問題
  • 「世界に一つの神の国」−学問と教育の分離
  • 「神武天皇はいない」と言うなかれ!−津田左右吉事件
  • 津田批判の背後に垣間見える陸軍の影

第六章「神の国」か「立憲主義」か――大日本帝国憲法をめぐる議論

  • 「立憲的」だった大日本帝国憲法
  • 大日本帝国憲法制定時の伊藤博文-森有礼論争
  • 「天皇ハ神聖ニシテ侵スヘカラス」の真意
  • 「統帥権干犯」と「憲政の常道」
  • ロンドン軍縮条約における統帥権干犯事件
  • 軍部と政党に“利用”された「天皇機関説」
  • 第二次国体明徴声明−立憲主義の終焉
  • 陸軍の遺恨と二・二六事件
  • 「国民精神総動員」−神国日本へ全てを捧げよ!

第七章「神風」の終末――「神の国」が最後に目にしたもの

  • 「統率の外道」−特攻と神風
  • 「特攻」と「コンコルドの誤謬」
  • 「神風」「神州不滅」の呪縛
  • 一撃講和か即時講和か−続く迷走
  • 鈴木貫太郎の“自虐史観”
  • 「一億玉砕」と沖縄戦
  • ポツダム宣言受諾を阻む「国体護持」の壁
  • 米内光政の「敬神」と井上成美の「人の煩い」

 

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