中学入試受験生ならここまで解ける!共通テスト2021年日本史Bその3

前回と前々回の続きで、中学受験社会をしっかりやっておくと日本史Bでどれだけ有利になるかを見ています。ここまで中学入試社会科対策をしているだけで、社会が得意な生徒ならば、現時点で80点以上を取れることが明らかになりました。中学入試社会科対策をしっかりするだけで、共通テストがかなり有利になることがわかります。この分のアドバンテージを他の科目対策に回せる、と考えると非常に大きいと言えるでしょう。

もう一つ、共通テストでは「思考力」が問われていますが、これはほぼ「国語の読解能力」とイコールです。これからの教育は国語力、つまり分析力(これは読み取る力です)・思考力(読み取ったことを基にして考える能力です)・表現力(読み取ったことを基にして考えたことを、正しく伝える能力です)が重視されます。

中学入試受験生ならここまで解ける!共通テスト2021年日本史Bその2

中学入試受験生ならここまで解ける!共通テスト2021年日本史Bその1

 

それでは本日は第5問と第6問を見ていきます。

 

第5問

景山英子に関する問題です。中学受験生は知りません。ちなみに私も知りません(というか、覚えていません)。山川出版社の『日本史詳説』の欄外の注に載っていました。後花園天皇は載っていませんから、後花園天皇よりは重要な人物であるようです。

それでも実は問題なく解けます。

問1

景山英子に関する文章の空欄補充問題です。

「自由民権運動に参加する中、(ア)を企てた大阪事件に連座して逮捕」とあります。大阪事件については難関校では出されたことがありますので、解ける可能性はあります。

「(イ)の活動に参加することで社会主義に近づくと」とあります。この辺は幸徳秋水と大逆事件を学ぶくらいです。

選択肢はアが「朝鮮の内政改革」か「台湾の支配」の選択です。難関校志望ならば解いてほしいところです。

イは「平民社」か「政教社」の選択肢です。社会主義ですから「平民社」を選んでほしいところですね。ただこの問1は中学受験としては高度なので一応範囲外と判定したいと思います。

 

問2

幕末維新期の武士について述べた文について、誰のことか、という問題です。

「この人物が藩政の主導権を握った薩摩藩」という文に「西郷隆盛」か「木戸孝允」を選ぶ問題です。中学受験生ならば難なく解けます。

「榎本武揚が、この地で新政府軍に降伏した」という文に「新潟」か「箱館」を答える問題です。「箱館」一択ですね。五稜郭を知っていれば解ける問題でしょう。

 

問3

影山が「角筈女子工芸学校」を設立した時の影山の意図を問う問題ですが、影山も「角筈女子工芸学校」も知らなくても問題ありません。史料がついています。

と言っても古文なので中学受験生の範囲からは外れていると判定しました。また選択肢も二つは教育勅語が出された年代と義務教育の期間が四年から六年に伸ばされた年代についてある程度知っておかないと解けない問題です。

 

問4

影山が1907年に『世界婦人』を発刊した時の社会についての文の正誤問題です。

これも社会運動に関する知識が不可欠なので中学受験生の範囲外と認定します。

 

ここでは12点中3点です。ここは厳しいです。

 

第6問

戦後の民主化政策についての設問です。

問1

「寄生地主制の形成」に関する設問です。「寄生地主制?何それ」でも問題ありません。

X 大地主は小作料を現金で受け取っていた。

Y 小作人の中には、子どもたちを工場などへ働きに出すものがいた。

 

この二つの文の正誤です。Xは誤りでYは正しいです。小作料は現物納でした。こういう問題はどうしても後回しになるので、社会の時間が少ないとなかなか難しいですが、実は国語の教材に出てきたりします。

 

問2

「日本農民組合」の設問です。知らなくても問題ありません。

1920年代に活躍した組織はどれですか、という問題です。

「全国水平社」「日本社会党」「明六社」「翼賛政治会」です。「全国水平社」を選べないようでは中学受験でも困る局面がありそうです。ちなみに全部だいたい理解しておいてほしい組織ではあります。

 

問3

「寄生地主制」の問題です。

寄生地主制の(ア)(1920年代=1930年代前半)

ここの(ア)には「発展」と「動揺」のどちらが入るか、という問題で、その理由を「小作料の引き上げが実現した」「小作料の引下げを求める動きが広まった」から選ぶ問題です。

 

これは問題に「小作料や耕作権をめぐって、小作争議が活発化」と書いてありますので、「動揺」「小作料の引き下げを求める動きが広まった」を選ぶのが正解です。これは知識の有無よりは、問題をしっかりと見ているか、ということが問われそうです。

 

問4

戦時下の物資の統制に関する正誤問題です。

X 砂糖・マッチなどの消費を制限する切符制が開始された。

Y 国家総動員法にもとづき、価格等統制令が出された。

これは両方とも正解ですが、少し難しいかと思います。

 

問5

同じく物資統制の問題です。

空欄イに入る言葉を選ぶ問題です。「小作料の引き上げを禁止する」「政府が耕作者から直接買い上げる」「自作農創設の促進を決定」という言葉から、これらの一連の政策は「小作人(耕作者)を優遇する政策」であって、「地主を優遇する政策」ではないことが明らかです。そしてそれは「公定価格以外の食料取引を禁止する」という文言などから「寄生地主制を強化するため」ではなく「食料の生産を奨励するため」であることも明らかです。

これは知識問題ではなく、単に読解問題のレベルだと思います。

 

問6

次のスライドを参考にしながら農地改革について解答する問題です。

 

このグラフを見て誤っている文を選ぶ問題です。

「1965年の農家の約8割は兼業農家であり、1935年時点と同様に、専業農家の割合は低いままである」というのが誤りであることは、折れ線グラフの読み方を知っている生徒ならば誰でも解けるでしょう。これも社会科の問題ではなく、むしろ算数の基礎的問題と言えそうです。

 

問7

戦後の農業の展開です。

a 米の生産調整のため、減反政策が開始された。

b 米の輸入量を減らすため、減反政策が開始された。

c 農業の経営の改善を図るため、農業気温法が制定された。

d 自作農を創設するため、農業基本法が制定された。

 

農業基本法は少し難問ですが、減反政策は地理分野の基本ですね。自作農の創設は「農地改革」であることがわかっておればaとcが正しいことがわかります。

 

ここでは国語力や算数力の問題が7問中3問、中学受験レベルが3問ありました。

 

以上第5問・第6問合わせて34点中22点、64%の正答率となりました。あとは少しのアップデートで十分ですね。

で、全体の成績としては100点中73点が中学受験の知識で解答できます。

中学受験で社会を選択していなかった生徒は、中学校で社会をしっかりとしておく必要があります。何しろ社会を選択した生徒はこれだけのアドバンテージを持って中学校に入ってくるわけです。

 

そして繰り返しになりますが、今年は特に史料やグラフを見て考えないと解けない問題が出ています。国語力をしっかりと見直す必要があることがお分かりいただけたと思います。

 

特に日本史Bに関しては、昨年よりも中学受験の知識で解ける問題が増えている反面、知識だけでは解けない問題が出題されていることが分かります。これからの教育の方向性、さらには社会のニーズの方向性が明らかになっている、と言えるでしょう。ここで要求されている能力は、知識を詰め込む能力ではなく、情報を分析し、考察し、それをアウトプットする能力だということです。そしてここで要求されている能力は小学生でも十分に備わりうるものなのです。

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