室町時代の一揆とそれを題材として2020年教育改革を考えてみた

室町時代には一揆がしばしば起こる、ということは中学受験でも扱います。

 

中学受験で扱う一揆は基本的に次の三つです。

 

1428年の正長の土一揆→初めての「土民」の一揆=土一揆、徳政令を求めた。近江国(滋賀県)の馬借から始まった。

1485年の山城国一揆→山城国(京都府南部)の国人が畠山氏の軍勢の退去を求めて立ち上がり、八年間の自治を行った。

1488年の加賀一向一揆→加賀国(石川県)の一向宗(浄土真宗)の門徒が立ち上がり、一〇〇年近くの自治を行った。「百姓持ちたる国」と言われた。

 

まあ「暗記」ならばこれを覚えればいいわけで、そんな大したことはありません。高校受験でもそれほど違いはないので、これくらいの知識を押さえておけばいいかと思います。

 

ではもう少し詳しく掘り下げましょう。

 

二〇二〇年教育改革、ということが言われています。「知識詰め込み」から「思考力」「判断力」「表現力」を伸ばす、というキャッチフレーズが使われています。

これについて誤解して欲しくないのは、「知識はいらない」というのは間違い、ということです。そもそも何も知らないことについて「思考」「判断」「表現」ができるでしょうか。

いらないのは「正長の土一揆」が「1428年」なのか「1429年」なのか、という非常に細かい話であって、「正長の土一揆」とか、「荘園」と「惣」の違いとか、室町時代における生産力の上昇、とか、「土倉」とか、「徳政令」とかについて知らなければ、「正長の土一揆」について何も書けません。

 

たとえば正長の土一揆について「思考」し、「判断」し、「表現」するには、室町時代における生産力の発展と農民が力をつけてくること、有力な農民(しばしば守護の被官となったりする)を中心としてその土地でのまとまりができること、お金が使われるようになって、都市部ではお金を貸して利子でかせぐ人(金融業者といいます)が出現し、都市周辺ではお金が必要なために借金(債務といいます)を背負って借金の代わり(担保といいます)にいろいろなもの、例えば自分の耕作地とか、自分の子どもとか、自分自身とかを売り払ってしまう人も出てきます。こうしたものを「なかったことにする」「本来あるべきところにもどす」という「徳政令」を望む人々が出てきます。

正長の土一揆というのはそういう背景があって登場してきました。しかもそれが「正長元年」というのには意味があります。この年、足利義持が死去して足利義教が後継者になりました。こういう代替わりには、「徳政」という「いい政治」を行うことが求められたのです。「いい政治」というのは色々ありますが、民の嘆きを聞いてそれを解消することが当時は重視されていました。これについて理解しようとすれば、後嵯峨院政や北条泰時にまで話を戻さなければならず、さらには承久の乱まで話をもどす必要がありますので、これ以上は説明はしません。

 

とここまでみてくれば、同時期に起きた播磨の土一揆との違いと同じところとか、嘉吉の徳政一揆との違い、同じ、とか、山城国一揆とか加賀一向一揆とかとはどう違うのか、あるいは同じ点はどこなのか、ということにまで興味関心が広がっていきます。自分で疑問点を立て、自分で調査し、いろいろ考え、まとめ、わかりやすく説明できるようにする。これが教育改革で求められている力です。

 

そのために必要な勉強にはやはり「知識」を獲得することは必要です。ただその「知識」は細かい知識ではありません。大きな流れとそれぞれの連関を知ることが大事です。

 

ではどうすればそういう知識は獲得できるのでしょうか。

 

それにはいろいろなことに興味を持って、自分でいろいろ調べてみることが必要です。読書は必須です。またネットもケースバイケースですが、受験生でネットを全くみない、という生徒さんが結構多いのですが、優秀な生徒さんは自分でネットを調べて動画を見たりして知識を深めていきます。

 

保護者の皆様には何とぞお子様の興味関心を制限することなく、広げていけるようにしてあげてください。それが教育改革に対応するもっとも有効な方法です。

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