社会科は暗記科目か?プロの歴史学研究者兼塾講師が考えてみた

社会科は暗記科目か?

これはよく見かける質問です。ちなみに私は20数年間何らかの形で社会科講師(中学受験塾・高校受験塾・大学)をやってきましたが、聞かれたことはありません。推測になりますが、暗記科目であることは自明のことだからではないか、と思っています。

 

結論から言えば暗記科目です。ただし、いかなる科目も暗記科目である、という前提付きです。数学にしても公式や定理を暗記しないとできません。暗記能力が弱くて高校時代数学が全くできなかった私が言うのですから間違いがありません。もっとも暗記能力が弱いので社会の成績もパッとしませんでした。数学にせよ、社会にせよ、点を取りたければベースとなる知識は暗記する必要があります。

 

なぜ暗記科目として扱われるのか

では、なぜ社会は暗記科目と言われるのでしょうか。これも私自身の経験ですが、確かに無理やり暗記すれば点が比較的に取りやすい、という特質が社会にはあるような気がします。

 

プロの歴史学研究者が暗記が得意とは限らない

私が高校三年の時です。私は史学科を志望していましたが、日本史の成績はパッとしません。他の史学科志望の生徒と比べるとふた回りくらい下がっていました。そこで一回くらいは本気を見せないとな、と必死で暗記しました。98点取れました。江戸時代の分野です。数日を経ずして全て忘れました。多くの人の社会科の経験とはこんなものでしょう。

 

ちなみに私の専門は室町時代前期です。そこの政治史を中心にやっています。

サイニー 秦野裕介

上のリンクをクリックすれば私の研究成果の一部が出てきます。「CiNii(サイニー)」というサイトで、国立情報学研究所(Nii)が作成しているサイトです。一応真面目に歴史学研究をやっていることがご理解いただけると思います。

もう一つ、リサーチマップがこちらです。こちらは、科学技術振興機構が作成しているサイトで、サイニーとは違い、研究者自らが作成する形です。研究者の履歴書と言って過言ではありません。

リサーチマップ 秦野裕介

 

年号を知らなくても学術論文くらい書ける!

で、私の衝撃的な告白ですが、私が応仁の乱が1467年に起きた、ということを知ったのは大学院博士課程を出てからです。

 

「ええっ!?あんた修士論文で足利義教を、博士課程最終年度で足利義政の論文を書いていなかったけ?」ということは多くのここを読んでいただいている方には関係のないことですが、実は私は足利義政に関わる論文も書いています。しかし応仁の乱が何年に起きたのか、というのは意識していませんでした。ちなみに応仁の乱の過程についてはかなり詳しく知っていました。

 

年号など知らなくても流れを知っていれば歴史学研究者としては問題がないわけです。流れは暗記するものではありません。因果関係を押さえて理解することによって流れを知ることができるものです。

 

必要があれば年号は暗記してしまう

私が応仁の乱の年代の1467年であることを暗記したのは、大学院修了後(厳密に言えば単位取得退学後)、塾の講師を始めたからです。塾講師である以上、授業をするときに暗記していないとスムーズに授業ができません。必死で覚えました。日米和親条約や日米修好通商条約とか長ったらしい名前も噛まないように必死で覚えました。

 

暗記する前にしておくべきこと

つまり流れさえしっかりつかんでいれば、必要に応じて暗記はすぐにできます。逆に流れを理解していないといくら暗記してもそれは体系的な知識として身についていないのですぐに忘れます。

 

暗記するのは家でやるものです。塾の授業で必要なのは流れを押さえさせることです。それには興味を持ってもらうことが必要だと私は思っています。まずは興味を持たないと覚えることもなかなかできません。

 

語呂合わせは個人的にどうか

だから私は個人的には語呂合わせにはそれほどの意味があるとは思いません。楽しければそれはそれで有効だとは思いますが、私はあまり楽しいとは思えませんでしたので生徒には強いて勧めていません。語呂合わせを覚えるくらいならば覚えられるのではないか、と思っています。

 

こちらに続編を公開しています。合わせてご覧ください。

社会は暗記科目か2 出題意図を掘り下げないとダメ

フォローする