本の文字数はどれくらい書くものなのか
拙著『乱世の天皇』(東京堂出版)の話です。
著書はどれだけの文字数なのか、という話です。
作文などで1000字書くのも大変な作文嫌いの生徒さんもいらっしゃるでしょう。私も小学校時代はそうでした。今でもブログの更新で2000字も書くと頭がフラフラです。1000字は私でもしんどいことがあります。特にみなさんが作文教室で書かされているテーマなど、私にはまともな作文が書けるようには思えません。
そんな私でも本は書けました。あの本の字数は一体どれくらいなのでしょうか。また本はどの程度の字数を書いているのでしょうか。
書籍の字数について、作家であり、出版社経営をしていらっしゃる木暮太一氏の動画を見ていました。
https://www.youtube.com/watch?v=BBg25fZYipM
内容をざっくり言いますと、「一冊10万字は古い。今は8万字か6万字だ」という内容です。
ちなみに拙著は17万字です。324ページです。
ビジネス書などの実用書では男性向け8万字256ページ、女性向け6万字192ページだそうです。
それに比べると、拙著の字数とページ数はぶっちぎってます。
ちなみに拙著は同種の書物に比べて多いか、といえばそうでもありません。同種の著書を調べてみました。拙著が目標とした渡邊大門氏の『戦国の貧乏天皇』(柏書房)は・・・・270ページ、ごめん、多かったわ。
気を取り直して神田裕里氏の『朝廷の戦国時代』(吉川弘文館)は・・・・・
276ページ。スマソ。多かったわ。
多分室町・戦国時代の天皇論では圧倒的ボリューム、ということでいいですか・・・。
実際17万字、というボリューム、私が暴走して書いて書いて書きまくって編集者をなかせた、というものではありません。
300〜320ページ前後という編集部からの条件があり、それに従って書いています。
これには理由が色々あります。一つの理由は
「秦野裕介?だれよ、そいつ。聞いたことねぇわ」
と1000人中999人がいうレベルの知名度であることです。
すんません、見栄はってかなり過大評価しています。多分もう一桁増やす必要がありますね。
おそらく私の名前を知っているのは西宮市の某塾の関係者か、立命館大学の文学部の一部の受講生か、立命館アジア太平洋大学の受講生のうち、極度に物覚えのいい人ぐらいでしょう。
そんな極端に知名度の低い人間ならば、そんなにたくさん部数は刷れません。1万部なんてありえません。
一般論をいえば私のように無名の作者の場合3000部は行かないのが普通、と出版セミナー系の本には書いてありました。そんなものです。(実際の部数と印税率は公表してません)
そのように少ない部数で利益を出そうと刷れば「薄利多売」ではなく、一つの本の単価をあげて少部数出す方式になります。
ちなみに一つ、単価を上げるための方策としてハードカバーで出す、というのがあります。売れる人はソフトカバーを出せます。少し意識してみてみるとよく分かります。もちろん例外も多いので、「あっ!ハードカバーだ!こいつ売れてねえんだ!w」ということでもありません。「ハードカバーで出してください」というワガママは通りやすそうですが、私が「ソフトカバーでお願いします」と言っても難しいのではないか、と思います。
新書は大体10数万字です。新書はいわゆるビジネス書よりも字数が多いです。ビジネス書は字が大きく、行間も広く、周りの余白も大きく取ってあります。新書は安く作れるので単価も安くなります。従ってそこそこ売れる、とみなされていないと書かせてもらえません。私の大きな目標は新書を出すことです。
拙著のターゲットは基本的に「コアな歴史ファン」です。私がからんだ書籍は大体同じです。こういう層の人はビジネス書などの実用書を読む人に比べると読書好きです。というよりも実用書は何か得たい知識やノウハウがあって読むのですが、「コアな歴史ファン」は読むこと自体を楽しみます。
売れる本のテーマというのはつぎの3つらしいです。
1 ダイエット
2 お金儲け
3 不安を取り除く
1 ダイエットについて
「後花園天皇の生涯を知って私も10kgの減量に成功しました!」
そんな人いません。後花園天皇について知っても減量できません。後花園天皇の本を書いても全く減量できませんでした。当たり前ですが。
2 お金儲け
「後花園天皇の生涯を知ったおかげで、1億円稼げるようになりました!」
ありえません。多分。もっとも後花園天皇の話をうまく使って話をしてお金儲けができるかもしれませんが、その方法は私は書いていません。というか、そういう方法があれば私が知りたいです。
3 不安を取り除く
「後花園天皇の生涯を知って、血圧が正常値にもどり、血糖値も問題なくなり、尿酸値も下がり、肝機能値も正常になりました!」
いや、後花園天皇の生涯を本にするのもいいですが、とりあえずダイエットしましょうよ、私。全部自分のことです。はい。
拙著は室町時代の天皇について関心のある方が手にとって読んでくださっていると思います。そのような方は拙著を読んで、何か実用的なベネフィットを求めているわけではないでしょう。拙著が提供できるベネフィットは、あまり知られていない室町幕府の天皇の歴史について知ることができる、です。
もっとも「室町時代の天皇の歴史について知ること」ができれば、天皇という制度そのものにも考えるための視座や素材を提供することができる、と私は考えています。何しろ室町時代は天皇にとって最大の危機だった、と私は考えています。そこからまさに「奇跡の再生」が行われたわけです。その過程と背景を知ることは、天皇の長期的存続の意味を問うことになる、ひいては日本社会そのものを考える際の材料になるのではないか、と考えています。
その辺の仕掛けについては改めてエントリを立てたいと思います。
ちなみにこのエントリは下記のブログの記事です。
あちらのブログでは歴史学研究者の立場から色々書いています。こちらよりも少し難しい話をしています。歴史学に興味を持った方はあちらのブログもよろしくお願いします。